塗装できない屋根材の種類と特徴について解説

塗装できない屋根材の正体とは

屋根のメンテナンスの基本といえば屋根塗装ですが、実は塗装によるメンテナンスがほぼ不可能な屋根があります。

それが屋根に「1990年から2006年頃までに開発・製造されたノンアスベスト屋根材」を使用している場合です。

この時期に出回っていたノンアスベスト屋根材は非常に耐久性や強度に乏しく、早い時期から激しい劣化をしてしまい塗装工事ができなくなるという問題が発生しています。

本記事では塗装できない屋根材として問題となってしまった1990年から2006年頃までに開発・製造されたノンアスベスト屋根材について、その種類や特徴、背景などを解説します。特にこの時期に家を建てた方は該当する可能性があるため注意が必要です。

塗装できない屋根材が生まれた背景

1990年から2006年頃に出回ったノンアスベスト屋根材は、なぜ塗装できないほどに劣化が激しくなってしまったのでしょうか。この背景には、アスベスト規制の流れを受けてアスベスト屋根材からノンアスベスト屋根材への移行が急がれていた時期であったことが挙げられます。

アスベスト(石綿)という素材は耐久度が高いにも関わらず安価な素材であったため、セメントにアスベストを混ぜて圧縮成形した「石綿プレート」は日本の屋根建築資材として様々な場所に広く使用されていました。

しかし、アスベストを吸い込んだことが原因とされる肺がんや中皮腫などの重大な健康問題などが社会問題として大きく取り上げられるようになりました。

1960年の「じん肺法」の制定から段階的にアスベストは規制されていくのですが、2004年にはアスベスト含有量が1%を超える製品の製造、販売が禁止され、2006年にはアスベスト含有量0.1%を超える製品の製造、輸入、使用等が禁止されました(いずれも労働安全衛生法施行令の改正による)。この2006年の改正をもってアスベストが全面禁止となりました。

全面禁止となる2006年以前よりアスベストの健康被害の問題は大きくなっていたため、各建材メーカーは1990年頃からノンアスベスト屋根材の開発・製造・販売を開始していました。

メーカーは今まで耐久性の要であったアスベストを使用せずに屋根材を急いで作らなければならなくなりました。試行錯誤をしてノンアスベスト屋根材を開発しましたが、残念ながら技術が未熟でどのメーカーの屋根材も耐久性に乏しかったのです。

この時期に建てられた住宅にはこの耐久性に乏しいノンアスベスト屋根材が使用されており、結果的に比較的早い段階で老朽化し、塗装ができないレベルの割れや表層部の剥がれなどの劣化症状が屋根全体に広がる事態となってしまう住宅が全国的に増えてしまいました。

なお、2006年以降から新たに製造されはじめた屋根材は更に改良がなされ、ノンアスベストでも耐久性を保持できるようになりました。そのため、1990年〜2006年頃の時期に出回ったものだけが問題となっているのですね。

塗装できない屋根材の種類と劣化の特徴

世に出回っている代表的な塗装できない屋根材を表にまとめました。

劣化の症状は製品によっていくらか差異がありますが、基本的には屋根全体のひび割れや欠損、ミルフィーユのように表層が剥がれてしまう層状剥離などが挙げられます。

今の住宅の屋根材に何が使用されているかを把握しているご家庭はほとんどないと思いますので、これらの屋根材が出回っている時期に家を建てられた方は屋根の表面を外から見てみましょう。

外から屋根を確認し、劣化で表層部の退色が激しかったり、ひび割れや欠損が多数見受けられたり、ミルフィーユのように屋根材の先端から材料がペリペリと層のように剥がれていた場合、該当の屋根材を使用している可能性が非常に高いです。

注意点として、決して屋根に上って確認することは絶対にやめてください。割れを起こして被害が拡大したり怪我をするおそれがあります。

塗装ができない理由

1990年~2006年頃に製造されたノンアスベスト屋根材には塗装ができないのはもちろん先に挙げた数々の劣化症状が原因ですが、もっと詳しく言えば塗装をしても塗装前より劣化が進んでしまい、塗装工事を行う意味がなくなってしまうからなのです。

これまで解説してきたように、この時期のノンアスベスト屋根材はこれまでアスベストで賄ってきた耐久性を補うことが出来ていないため、通常の屋根材より耐久性がなく、非常に脆い作りになっています。

そのため、何もしていなくても通常より早く劣化し割れてしまう状況にあります。その状況で塗装工事をするとなると、屋根の上に施工する職人が乗らなければならないので、脆い屋根は割れてしまったり、さらにヒビが広がったりとプラスどころかマイナスになってしまうのです。

塗装できない屋根材のメンテナンスは「屋根カバー工法」か「屋根葺き替え工事」

本記事で紹介した屋根材を使用している住宅は、基本的に塗装工事によるメンテナンスが難しくなります。

その場合のメンテナンス方法は、基本的に「屋根カバー工法」で現在の屋根の上に新しい屋根を被せて設置するか「屋根葺き替え工事」で今の屋根を撤去して新しい屋根を設置し直すかの2択になります。

屋根リフォームになりますので塗装よりは割高になってしまいますが、劣化が著しいと外観を損ねますし、なにより雨漏りや破損した欠片の落下などさまざまな危険性も増すためメンテナンスは早いうちに必要となるでしょう。
屋根カバー工法と屋根葺き替え工事の特徴やどちらを選ぶべきかという点に関してはこちらのコラムで解説していますのでぜひご参照ください。

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