コロニアル屋根材の種類とメンテナンス方法について解説
近年のポピュラー屋根材「コロニアル」とは
近年、日本の住宅屋根材として人気の高い屋根材が「コロニアル」です。主成分はセメント、厚さは約5ミリ程度の薄く平たい塗装されたセメント板で、その軽さやコストの安さ、加工のしやすさなどから近年の新築住宅の屋根材のポピュラーな屋根材となりました。
正式名称は「薄型化粧スレート」ですが、日本で初めて発売され一気に普及していった商品の名前が久保田松下電工(現:ケイミュー)の「コロニアル」であったため、薄型化粧スレートの屋根材を総称してコロニアルと呼ぶようになりました。
ちなみに、他にも「カラーベスト」と呼ばれることがあります。これは、同社がアスベストの使用・製造禁止となった後に発売したアスベスト不使用の薄型化粧スレートの商品です。さまざまな呼び方が異なるので混乱しがちですが、コロニアル・カラーベストは基本的に同じものを指すと考えてもらっても問題ありません。
コロニアル屋根材の種類・変遷
コロニアル屋根の種類と変遷を表にまとめました。アスベストが使用できた頃の代表的商品であるニューコロニアル(1979年発売)はアスベストのおかげで非常に高い耐久力を誇り、耐久性は30〜40年ほどもつとされています。
アスベストが入っている屋根材ですが極端な劣化がなければ過度に心配する必要はありませんが、劣化が著しかったりメンテナンス時期が来たら葺き替えた方が良いでしょう。
アスベストが社会問題となり規制の流れを受けて第2世代であるコロニアルNEOが2001年に発売されましたが、当時は耐久性の要であったアスベストを使用せずに耐久性を上げることが難しく、耐久性がかなり乏しいという事態に陥ってしまいました。
耐久性も15〜20年と短く、15年目くらいからひび割れや欠損、層状剥離などの劣化症状が見られるほど脆くなり、塗装ができない屋根材となってしまいました。中には裁判沙汰になるほど耐久性の問題が大きくなり、発売中止になりました。
コロニアルNEOの同世代の屋根材は各メーカー同様の症状が出ています。詳しくは別コラムでも解説していますので良ければそちらもご覧ください。
耐久性の問題があったコロニアルNEOに代わり2008年から登場したコロニアルクアッド・コロニアルグラッサが現行品となります。非アスベストでも高い耐久性を保持することができるようになりました。
ニューコロニアルのように30年近い耐久性があるかどうかはまだ発売開始から年数が経過していないため、評価はこれからとなります。少なくともコロニアルNEOよりは耐久性があるとは思っておいてよいでしょう。
コロニアル屋根のメリット・デメリット
コロニアル屋根材が普及した大きな理由のひとつが軽量であるという点です。重さは瓦屋根の約3分の1に抑えられます。屋根が軽いと住宅の重心が下がるため耐震性が向上します。特に地震の多い日本において、この特徴は家屋の安全性を高める重要な要素です。
また、コストパフォーマンスの高さも特筆すべき点です。瓦屋根と比較すると材料費はもちろん、施工費用も抑えることができます。メンテナンスにかかる費用も比較的安価で、家計への負担が少ないのが特徴です。
その他、デザイン面でも豊富なカラーバリエーションを取り揃えており、モダンな外観を演出できます。洋風住宅との相性が良いですね。
業者の視点から見ても加工がしやすく様々な屋根に対応可能で扱える業者が多いです。扱いやすいと業者の技量による仕上がりのばらつきも少ないですし、相談もしやすいのは工事を頼む側としてのメリットです。
一方でデメリットとしては、経年劣化による色あせや退色が起こりやすく、苔や藻が付きやすい傾向があります。また、強い衝撃に対しては比較的弱く、ひび割れもしやすいため台風時の飛来物による破損には注意が必要です。これにより10年前後くらいのスパンで定期的なメンテナンスが必要なのはデメリットといえるでしょう。
コロニアル屋根のメンテナンスは「屋根カバー工法」か「屋根葺き替え工事」
目に見えて気になるのは苔や色褪せ、退色などの屋根の汚れですね。屋根の汚れのメンテナンスは塗装工事がありますが、実はこれらの汚れが屋根材そのものの劣化につながるわけではありません。
退色して苔だらけのコロニアル屋根でも、耐用年数の範囲内であれば外観が良くないだけで雨漏りなどの劣化症状が出ないことが多いです。よって、美観を気にしないのであれば塗装工事の必要性は低いです。美観を維持したい場合は塗装によるメンテナンスを行いましょう。
劣化症状が出ている場合は屋根材だけでなく、頂上にある棟板金や屋根材の下にある防水シートや下地などのトラブルも起きている可能性があるため、屋根リフォームを検討する必要があります。
劣化・破損箇所のみを差し替えるなど部分修理という手もあります。業者と相談してそれで済みそうならそれで問題ありませんが、効果は限定的ですし、一部が劣化しているのであれば他の部分の劣化もそう遠くない未来に表面化する可能性は十分にあります。その部分も加味して相談する必要があります。
全面屋根リフォームの方法は、既存の屋根の上に新しい屋根を被せる「屋根カバー工法」もしくは既存の屋根を撤去して新しい屋根を設置する「屋根葺き替え工事」の2つです。
屋根カバー工法のほうが安価ではありますが、基本的に上に被せる屋根は金属屋根になりますのでコロニアル屋根とは外観が変化してしまいます。コロニアル屋根の風合いを残したい方は多少お金がかかっても屋根葺き替えのほうが良いかもしれません。
経済状況や住宅の考え方、価値観でどの工事にするか選択します。それぞれの工事の特徴と選び方についてはこちらで解説していますので、屋根リフォームを検討する場合はぜひこちらもチェックしてください。
コロニアル屋根は安価でデザイン性もよく、軽くて耐震性も高いという魅力を持つ一方、他の屋根材と比較すると薄型であるため耐用年数がやや短い屋根材でもあります。メンテナンスが重要な屋根材となりますので、適切な時期に適切なメンテナンスをすることが大事です。
なにか気になる点があればまずはお気軽にご相談くださいませ。トミックスでは建物調査、お見積りまで無料で承っております。